2013.09.07 ハイパワーLED電源の検討
去年の暮からハイパワーのLED電源を作りたいと思っていました。
ちゃんとした熱の計算をして作ろうと思いつつ後回しに....。
現行のLED電源から取り出せる電力を以前計算した時の結果と新たにハイパワーLED電源の放熱設計に
関しての検討結果をまとめてみました。
現在のLED電源は一体どこまでのパワーを出せるのか。
現在のLED電源でも5V 500mAまでなら取り出せます。
まず、放熱設計に関してNECのuPC7805(TO220パッケージ)を例に取って計算を行なった。
仕様書によると計算式は
式1 Tj=(Rth(j-c)+θc-HS+θHS)×PD+Taとなり
ここで
Rth(j-c):接合-ケース間熱抵抗
θc-HS :接触熱抵抗(絶縁シート使用の場合は絶縁シートの熱抵抗を含む)
θHS :放熱器の熱抵抗
PD :IC内部の消費電力(PD=(Vin−Vo)×IO+Vin×Ibias)
TA :動作周囲温度
Tj は一般的な半導体のジャンクション温度から125℃とした、パワー系は150℃まで行けるが余裕を持たせた。
Rth(j-c)はuPC7805の仕様書から値は5
θc-HS はシリコンゴムシートの値が3.4であること実際には2くらいと決めた。TC-A Seriesなら0.75とかいうのもありますね。
θHS 水谷電機工業のヒートシンク PUE16-30の熱抵抗15.9K/W
PDは今回求める消費電力
Taはケース内の温度で30℃とした。
これらを式1に代入すると125=(5+2+15.9)×PD+30となり、
PD=4.1Wとなる。但しこれはジャンクションを125℃と置いているため、絶対最大定格と思って良い、この時ヒートシンクの
温度は100℃を超えていると思われる。(こんな状態で使ってはいいけません)
Tjを70℃ヒートシンクで60℃くらいが実際に使える範囲なので再計算すると
70=(5+2+15.9)×PD+30となり、PD=1.75W
余談だが、
どこまでヒートシンク無しで行けるかというと
Tj=(Rth(j-a))×PD+Taとなり
TJを125℃Taを25℃とすればヒートシンク無しの場合のRth(j-a)はデータシートから65なので
125=65×PD+25
PD=(125-25)/65 で約1.5となり1.5Wまでは放熱板無しで行けることになる(恐ろしい)
LED電源に関して誤解をされている方も多いので少し解説すると
LED電源から取り出せる電力は8V入力で5V出力の場合500mAを取り出すと5×0.5=2.5Wが取り出せる
18V入力で15V出力の場合500mAを取り出すと15×0.5=7.5Wだが、この熱量が問題なのではなく、
この時LED電源での発熱量は8-5=3V 3V×0.5A=1.5Wとなり、これがLED電源のトランジスタで発生する
熱でこの熱がどれだけ放熱出来るかによってLED電源から取り出せる電流量が決まる。
18V入力で15V出力の場合でも18-15=3Vなので3V×0.5A=1.5WとなりLED電源での発熱量は同じになる。
このへんのイメージは模式的に書いてみたので下図を参照してください、
LED電源もそのレギュレーター部を見れば3端子の素子と言えます、左から全体の電力が入って来て
右から取り出す電力が出て行きあまった電圧と電流をかけた物が熱となって出てきます。
LED電源の場合その構造から入ってくる電圧と出て行く電圧の差は2.5V以上必要です。
1Aの電流を取り出そうとした場合取り出す電圧に関係なく2.5Wの電力損失(熱)が生じてしまいます。
さて、それではハイパワーLED電源の仕様はどうしようか悩みどころです。
私的には15V 1Aが取り出せれば良いかなと思っています皆さんはどんな電源が欲しいですか?
1Aを取り出すということは3Wの熱が生じるのでヒートシンクをどんな物にするかが一番の課題です。
あまり大きい物にするとHENのケースとかには入らなくなるしヒートシンクの形もかっこいい物に
したいですね。ヒートシンクの価格もあまりバカ高い物ではなく1,000円でお釣りのくるくらいに
したいと思っています。
RSで売っている↓このあたりが良さげです。
http://jp.rs-online.com/web/p/heatsinks/1898476/
↓こんなのも良いかな
http://jp.rs-online.com/web/p/heatsinks/2993336/
このヒートシンクの場合熱抵抗は3.6K/Wですから
70=(5+2+3.6)×PD+30となり、PD=3.77W
LED電源の入出力の電位差を2.5Vとすれば3.77/2.5=1.5となり、1.5Aまでは取り出せます。
2Aを取り出そうと思った場合に必要になるヒートシンクの熱抵抗は
((70-30)/5)-(5+2)=θHSとなりθHSはなんと1℃/Wバカでかいヒートシンクが必要になります、ここでなんとか絶縁シート
の熱抵抗を1くらいの物が使えれば2℃/Wのヒートシンクが使えるのですが・・・・・。
↓1℃/Wだとこれくらい必要ですね。ヒートシンクだけで1,200円
http://jp.rs-online.com/web/p/heatsinks/1898274/
↓2℃/Wのヒートシンクなら500円くらいで手頃です。
http://jp.rs-online.com/web/p/heatsinks/1898864/
なんとかここでなんとか絶縁シートの熱抵抗を1くらいの物と思って探していると、信越シリコンに
TC-A Seriesなら0.75とかいうのもありますね。一般に手に入るかどうかは分かりませんが。
熱抵抗の小さいシートをご存知の方はいらっしゃいませんでしょうか。
掲示板の方でTC-30BGという熱抵抗0.55℃/Wの物を見つけてもらいましたのでヒートシンク探しです。
さてさて、RSに注文しておいたヒートシンクが届きました。
うーん、なんだかどれも帯に短し襷に長しの感じでピンと来ませんよ。
左から2番目のやつが1.3K/Wなんですね、これなら十分な放熱が出来ますがでかい。
横95mm×高さ75mmもあります。なんか好きくないなーこれ。
千石電商で探していると℃/Wの表示はないですが
5W食わせて45℃上がるといううーん、30℃で45℃上がったら75℃か、限界だなこれ。
↓これなんか良さそうです。
http://www.sengoku.co.jp/mod/sgk_cart/detail.php?code=EEHD-4BBU
この辺を何個か買ってみて決めましょう。
2013.10.20 アートワークその1 レイアウト
ハイパワーのLED電源作るに当って悩んだのはLED電源の良さが損なわれる部分があるためです。
取り出す電流を大きくすると出力段のTrのベース電流が多く必要で、更に電流を多く流せるTrの場合
往々にしてhfeが低く前段の定電流回路の電流を増やさなくてはならないため、リップル除去率が悪く
なります。
これに関ししは、ダーリントンが構成出来るようにしました。
基板のアートワークです。
ざっくり部品の配置をしてみました。
130mm×70mmです。ピンク色の四角部がヒートシンクです。
銅箔の厚みは電源基板ですからもちろん140umです。
ヒートシンクもずいぶん悩みましたが写真の@とAが本命かな、もっとパワーを取り出したい人は
ヒートシンクの背丈方向を長くすることで対応出来るように考えました。
これだけ沢山のヒートシンクを買って本命は2個だけです。
2013.10.26 アートワークその2 コンパクト化
私の場合アートワークをする際出来るだけ「コンパクト」にというのがこだわりの1つです。
やはり日本人だからでしょうか、小さいところに押し込めたいという思いが強いです。無駄なスペースだらけの基板にはしたくないんですね。
そこで千石で売っているヒートシンクの21F74シリーズを捨てて30F58に絞りました。
30F58L50を標準にしようと思います。これでサイズは112mm×70mmまで小さく出来ます。
これだとたとえ高さ方向が30mmだったとしても8Wで65℃の温度上昇です。
室温25℃だとしても90℃50mmの物であれば8Wで+50℃くらいでしょうか、これなら75℃に収まりなんとか目をつぶれる
範囲に入ります。高さを150mmまで高くすれば+30℃ですから55℃となり十分安全です。人によって取り出したい電流と
VCEはまちまちでしょうから高さで調整すると良いでしょう。
ちなみに私は整流後の電圧から取り出す電圧の差(VCE)を4Vとし、取り出す電流を2Aに仮定して8Wの熱が発生することを想定しています。
更に大電流でPCの大きなTO-3Pパッケージのトランジスタを取り付けられる様にしました。これでNECのアンプA-10に使われた銘石2SC2987
なんかも取り付けられます。
もう配置もほぼ決まり、アートワークも頭のなかでは引けているので後はせっせとCADるだけです。
2013.11.10 アートワーク完了、とりあえずたたき台
アートワークを引いてみました、まずはたたき台です、ここから細かいところを
詰めていきましょう。
2013.11.10 アートワーク完了
アートワーク完成
LUCYさんやJINSONさんのアドバイスを取り込んでダイオードからの出口も太く、
出力にはフィルムコンも付けられる様に、電解の裏にもフィルムコンを付けられる様に
してみました。
出力のトランジスタはヒートシンクを使わずにシャーシ放熱出来るようにしました。
2013.11.24 動作確認OK
まずは基板が出来上がってきました。
140umなのでずっしり重い梱包でした。
やはり電源は140umにこだわりたいですね。特に今回は大電流なのでなおさらです。
写真上が表面、下が裏面です、シャーシ放熱する場合、インピーダンスが上がってしまうのを抑えるためにレジストを剥がしてあります、
ここに太い線をパラ付けすればOK。
140umの基板で面積が大きいため、コテの熱が逃げて半田付けはじっくり温める必要があります。
何度も書きますが、私は白光のPRESTOというコテを使っていて、ブーストボタンを押すと130Wになります。
今回もブーストボタンを押しっぱなしであればサクサクと付けられました。
amazonでも売っていますね、なんでこんなに安いのでしょう?
http://www.amazon.co.jp/%E7%99%BD%E5%85%89-%E5%8D%8A%E7%94%B0%E3%82%B4%E3%83%86-%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%88-%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%83%E3%83%97%E4%BB%98-No-984-01/dp/B000AQSCQS/ref=sr_1_7?ie=UTF8&qid=1385269164&sr=8-7&keywords=%E7%99%BD%E5%85%89+PRESTO
まずは手元にあったダミーロードでHIPOWERLED電源の計算をしてみましょう。
10Ωがあったので12Vで1.2A流れます、今回は秋月の2SC5198@250円を使ってみます。
秋月で売っている2SC5198はOランクなのでhfeが80〜160です。
仮にhfeが100だったとして2SC5198のベース電流に12mA必要で基準電圧を作るLEDのIfに7mA流すとします。
定電流回路の電圧は2V-0.6Vで1.4とします。
すると1.4/0.19=73Ωとなり75Ωが使えます。
あ、書き忘れましたが基準電圧を作るLEDには以前1.2Vを作ろうとして買ったものの使えなかったVF1.87Vの物を
使ってみましょう、2SC5198のVbeは0.9V〜1.5Vですのでとりあえず1とした場合出力に12V欲しいわけですからLEDで13Vを
作れば良いことになります。
13Vを1.87Vで割ると7個で良いことが分かります。
実際に組み上げて測定してみると12.19Vとほぼ計算通りの電圧が得られました。
実際に組み上げて測定してみると12.19Vとほぼ計算通りの電圧が得られました。
2016.11.27 ±動作確認
マニュアル中の±接続に間違えがありました。
図的に、CN3の1とCN1の2をつないでGNDに落とすのをやめる。
CN2の2と、CN2の1をつないでGNDとするが正解です。
修正するまでこちらの写真を参考にして下さい。
写真では見えにくいかもしれませんが、プラス側の出力は普通にプラスとし、プラス側の出力の
GNDとマイナス側の出力の+側を繋いで0Vとし、マイナス側のGND側をマイナス出力として使っています。
トランスはRSのトロイダルで2次側巻き線が2組あるので1組ずつ1枚の基板に接続します。
2013.11.30 回路図と作成マニュアルを公開
回路図です。
回路図中の電解コンデンサには全て裏にフィルムコンがパラで取り付けられる様にしてあります。
作成マニュアルです。
部品表です。
私が作った1Aの時の部品表です。
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